印刷管理

 「印刷管理」とは、第三者に文字入力・デザイン・写真類の取り込み・アミ掛けなどのなんらかの加工を依頼した場合、編集部の責任において必ず1回は、その加工状況をチェックする作業です。
 かつては、印刷所に依頼した作業をチェックするという、工程的にも理解しやすいものでした。
 現在では、その加工を依頼する相手が、印刷所の場合もありますし、編集プロダクションやデザインプロダクションの場合もあります。社内のデザイン部ということもあります。また、書籍などで編集者自身がDTPまで行う場合は、自分自身ということにもなります。
 印刷管理の作業は二つの工程で行われます。一つは組版、つまりDTP作業で出力された文字校正紙
チェックです。ここで初めて印刷物としての、デザインイメージも確認できます。赤字(校正記号)はJISの校正記号表を使用します。
 次に印刷所入稿後に、製版処理や面付けされた青焼きや色校正紙を確認する、製版校正です。
 「人は間違うものである」ことを前提に作られた、この出版物の管理システムは、一人の人間に過度な能力の追求や責任を負わせない、そして、より間違いを少なくするシステムとして、誇れるものだと考えます。このシステムに支えられ、出版物の信頼性も維持されてきました。
 ただ、今日の制作現場の現状を見ますと、もう一度このシステムが有効に稼働しているかを考える時代に来ているように思われます。
 



1―●文字校正
 
 デザインやDTP作業が終わり、デザインされた校正紙(ゲラ)が上がってくると、文字校正の始まりです。
 かつてのレイアウト指定での入稿では、原稿用紙に書かれたデータ化されていない文章原稿(生原稿)を印刷所に入稿し、印刷所内部で入力していました。そのため、文字校正では戻ってきた文章原稿との、引き合わせ校正が中心でした。現在は、文章の入力と推敲は、DTP作業前に編集部側で済ませ、データでの入稿が一般的になっています。
 現在の文字校正では、素読みによる文字内容の確認と、レイアウトイメージの確認が中心となりま
す。組版ルールや字体、キャプションと写真の関係などもチェックします。
 担当編集者、著者・ライター、校正者など、できるだけ多くの目を通します。「テキストデータ入稿だから、校正は不要」などという乱暴な意見も聞きますが、著者とて人ですから勘違いもありますし、DTPオペレータが全員組版ルールを熟知している訳ではありません。できれば第三者の目でもある、プロの校正者に依頼することも必要です。
 校正回数は、初校、再校の2回を原則とします。最悪の場合、三校目を念校として取ります。



文字初校
初校紙の赤字入れ
 左はかつてのレイアウト指定入稿の例。印刷所での文字入稿が多いため、ゲラと文章原稿との引き合わせ校正が中心となる。(現在ではレイアウト指定入稿であっても、テキスト入稿がほとんどのため、内容は素読みが中心となる)また、ゲラとレイアウト指定紙を重ねて位置の確認などのレイアウト校正作業もする。
 左の初校ゲラの赤字は、極端な見本例で、一般にはここまで赤字が入るケースは少ない。  

 上がってきた校正紙を、著者や校正者にファクスなどで送ります。ここから文字初校は始まります。
 編集長やデスクなど、上司の校正も、この時点で見てもらいましょう。
 文字校正では、まず初校で、もっとも時間をかけて確認します。コツは原稿整理時の記憶を忘れて、
読者の目で見てみることです。文字だけではなく写真のトリミングも確認します。
 確定は赤字書き、ライターへの疑問は鉛筆書きです。鉛筆書きはDTPに戻す前には明確にします。ライターや校正者から赤字が戻り、1枚の校正紙にまとめ、DTPに戻します。

ゲラのまとめ

文字再校
再校紙の赤字入れ

 2回目の文字校正です。ここでは、初校の赤字が正確に訂正されているかを確認する作業です。時間が取れれば素読みもします。また、初校赤字が多い場合は、二人以上で確認するようにします。
 確認が終れば、初校同様に1枚の戻し校正紙にまとめますが、作業進行に対する指示を忘れないように
します。
 まだ赤字が多く、確認のために、もう1校出してほしい場合は「要念校」あるいは「要三校」と指示します。多少の赤字はあるがDTP作業者を信頼できる場合は「責了(責任校了)」、赤字が無い場合は「校了」と赤字で指示します。

ゲラの指示



●責了・校了の意味を自覚する
 責了とは責任校了の略です。赤字が少なく、もう一校取る必要はないと判断し、「印刷所の責任において校了台紙にしてください」という意味と、編集部サイドとしては「責任を持って校正いたしました。後の直しはよろしくお願いいたします」という意味があります。つまり、ここで文字の校正が完了します。
 ところが責了の赤字が直され校了データとなって、次の製版工程で青焼や色校正ゲラが出されます
が、そこで平気で責了ゲラにない赤字を入れる編集者が多くなっています。明らかな事実関係の間違いが見つかった場合は当然赤字を入れますが、そのときも文字校正で見落としてしまった自分が恥ずかしいという態度を示してあたりまえです。ましてや微妙な言い回しや雰囲気で赤字を入れるのは約束違反も甚だしいことで、破廉恥な行為としか言えません。
 工程を理解し責了の意味を自覚して無責任校了にしないようにしましょう。


次は 製版校正ヘ  


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