新宿昭和館
「昭和26年に開館した新宿昭和館は、平成14(2002)年4月30日をもって、 その半世紀に及ぶ生を閉じた。その最後の日、スクリーンには、『三代目襲名』がかかっていた。わが映画の歴史とともにあった新宿昭和館に合掌!



 かつて黄昏映画館というのがあった。
といっても、「ガロ」というマンガ雑誌に存在した紙上の、空中楼閣ならぬ映画館だったが。時は、おそらく1992年から97年にかけてであったろう。そこで公開された文章の大部分は、拙著『映画全文』に収められているが、黄昏映画館の開館宣言ともいうべき文章は入れなかったので、始まりがいつと確定することができないのだ。終わりも同様である。むろん、当時の「ガロ」をひっくり返してみればわかるだろうが、いまは面倒くさい。いずれにせよ、「ガロ」創始者である(と同時に、わたしを物書きにしてしまった)長井勝一さんが、1996年1月5日に亡くなったあと1年ほど続いた黄昏映画館も、97年のある日をもって閉館となったのだ。
それは、つい昨日のような気もするが、指折り数えてみれば、あれからもう7年。この歳になると、一瞬のことのように思われもするが、その間には、鶴田浩二扮する菊池浅次郎が、ひしと背中にすがって今宵一夜だけは帰すまいとする藤純子の初栄の手を引きはがすようにしながら、「わいは、もう、わいでは ないんや」と断腸の一語を漏らす『明治侠客伝 三代目襲名』を、そのスクリーンに見た新宿昭和館も姿を消した。そして、「シネマ」も、「映画評論」も、「映画批評」も、小川徹の「映画芸術」もなくなって、誰も、映画批評なんぞ必要としなくなってしまった、いま……。
 改めて、黄昏映画館をリニューアル開館いたします。なに、リニューアルといったところで、紙上が狭くなったから、さしあたって電脳スペースに店を開こうという、窮余の一策。あまり肩肘張らずに、映画をめぐるよしなしごとを語っていきますが、わたくしとしましては、面白い映画に出会うことこそが第一、ついで良い観客、さらには新しく刺激的な批評を書く人に巡り会いたいというのが、新たにページを開く唯一の望みであります。
 という次第で、皆々様、何卒よろしくご贔屓のほど、おん願い奉りまするぅ……!



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