荒瀬光治
4――2つの「可読性」(リーダビリティとレジビリティ)

 文章そのものの内容表現や用字・用語を整理統一することで、読みやすくすることをリーダビリティ(readability)といい、視覚的なもの、つまり書体や字詰や行間の工夫で読みやすくすることをレジビリティ(legibility)といいます。
 現在の出版物の制作は分業化されています。著者から上がった原稿は編集者によって原稿整理されます。この作業で、表記・表現の統一や内容が読者対象とあっているかなど整理や判断をします。これが読みやすくするためのリーダビリティの作業です。
 1 冊の雑誌や書籍の中では、 同じ語は統一した表記で扱われます。これがバラバラでは読者は混乱して読みづらさを感じます。たとえば「コンピューター」なのか「コンピュータ」なのか。「その頃」なのか「そのころ」なのか。これは各出版社や編集部で表記一覧表などが作られていて、大まかな用字・用語は決められています。
 最近は文章を書き慣れた著者の方の中には、ご自身の原稿に赤字を入れられることを嫌われる方が増えているように聞いています。編集者は最初の読者でもありますし、伝えることのプロでもあります。読者の立場に立った原稿整理は、より的確に読者に伝えるための「赤字」です。
 レジビリティに関わる視覚的な面での編集はデザイナーの仕事です。
 まずは縦に組むか横に組むか。これに関しては 6を参照ください。今読んでいる、この組は横組です。
 次に文字の大きさと書体、そして太さです。文字の大きさは年齢によります。人の眼球は 12 歳前後に完成するようです。それまでの学年ではやや大きめの文字を選ぶのは教科書を見ればわかります。教科書の検定では各学年で使う大きさが決められています。この逆で個人差もありますが 35 歳前後から人は老眼がはじまります。50、60 代の方には小さな文字というだけで「読む意欲を削がれる」と言う方もいらっしゃいます。書体は明朝体とゴシック体を中心に、楷書にあたる教科書体などもあり、記事のイメージにも配慮しながら選びます。
 何段組みで何字詰にするか。行間はどの程度空けるか。一般の四六判の書籍でも最近は 2 段組も見かけるようになりました。内容にもよりますが、読みやすさを考えた行間の空きを心がけます。
 ここでは、レジビリティの問題を検討していきますが、リーダビリティ、レジビリティがともに補い合い、はじめて読者に快適な読書環境を提供できるのは言うまでもありません。
 

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